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bhaus' blog since Feb. 2004
没エッセイその2「早起きの価値」
※昨年某誌に投稿して没ったエッセイを臆面もなく掲載。「こういうのでは没になる」という参考にもなるかどうか。

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 未だに日常会話の中に出てくるかはわからないが「早起きは三文の得(徳)」という言葉があるだろう。早起きをするといいことがあるということだが、思うにこの言葉が未だに使われ続けているとすれば、総じて人は早起きではないことにならないか。
 早起き人間の中にも、体質がもはや早起きな人間がいる一方で、無理矢理仕事柄早起きせざるをえない人間がいて、そういう人なんかは本来早起きすること自体が不本意なのだな。たぶん。
 で、体質にせよ仕事柄にせよ、一人でも多くの早起き仲間を作りたがっているから、さも早起きであるのは良いことだとばかりに吹聴するのかもしれない。
 直接「早く起きろ」と言えばカドがたつものでも、まわりくどく「いいこと」のように言えば、仲間も増えると思っているのだろう。
 もしくは少しでも自分を励ましたいのかもしれない。
 いつもより少し早く起きたら、些細なことだが「いいこと」があった。で、思わず独り言を呟くのだ。

「おっ、早起きは三文の得だねえ」

って、なんか江戸っ子みたいな口調になってしまったりして。

 そもそもこの言葉の由来自体よく知らないぞ。インターネットで色々検索してみたが、一番もっともらしいのが、とある土地だか土手だかの地盤を固めたくて、早朝手伝ってくれた人には三文を報酬として支払ったのがはじまり、というものだ。
 大体、三文という貨幣価値がわからない。三文判などと安いハンコのことを言ったりするから、あまり高価なイメージはない。「一文なし」「無一文」「ビタ一文まからないよ!」などという言葉からも、小銭程度のことのように思える。「ビタ一文」の「ビタ」も気になるがな。漢字で鐚と書くらしいぞ。鐚銭とは「粗悪な金」言い方を変えれば「質の低い貨幣」という意味らしいぞ。それすらも「まからない」のか。ケチだなあ。

 インターネットで更に調べてみると、一文あたり現在の十円程度に相当するという説が濃厚だが、米の価格を参考に計算しているので、そうなると当時の米の価値まで調べなければならなくなる。
 一両で一般庶民四人家族が一か月生活できたという話もあるから、現代のおおよそ二十万円くらいを一両とみなした場合、四千文で一両だから、一文あたり五十円ということになる。三文で百五十円だ。五百ミリリットル容量のペットボトル飲料一本分だ。朝早く起きて土手踏みならしてペットボトル飲料一本支給されて「早起きは三文の得だねえ」と嬉しそうに言うだろうか。ちょっと考え方を変えてみるか。

 どの程度の早起きかを考えてみよう。いつもより十分程度の早起きで、いつもより一本前の通勤電車に乗れて、早く会社に行けて早く会社をあがれた。得と捉えるか、これを。貨幣価値としては確かに百五十円程度のものかもしれないが、わざわざ慣用句にするほどのものではないと思うのだ。
 もう少しリアルな考え方をしてみよう。三文を思いきって三千円くらいに考えてみて、時給千円くらいの仕事をいつもより三時間早く始めるのだ。朝から。物理的には「早起きは三千円の得」が成立するだろう。こういうのを物理的というのかどうかはさておいて。
 ただ、こうなると別の問題が浮上する。時給が千円くらいの仕事で、通常より三時間早めに仕事を始められる職業って何だ。パン屋か。いや、当て推量で書いてるけどね。
 そういえば昔、

「朝一番早いのは、パン屋のオジサン」

と歌っていた記憶があるが、二十四時間営業の仕事が珍しくない今となっては歌えないな。

 リアルに考えたら余計に「お得感」が薄れてしまったような気がする。結局のところ、現代の感覚では三百円くらいがちょうど良いのかもしれない。三千円の得ではやはりリアルすぎて「そりゃ早く働けばその分稼ぎも増えるだろう」と返されてしまいそうだ。所詮三文ははした金なのだ。でもその「ほんのちょっぴり」な感覚が「三文の得だねえ」と独り言を呟かせるのかもしれない。
 そう考えていくと、昔から人は早起きしたくもない日々を送り、それなりに仕事をこなしてきたが、大した幸せも得られず、たまに早起きしてほんのちょっぴり清々しさのようなものを感じて、ちょっとだけ得したようになる悲しい生き物なのかもしれない。

 これが海の向こうへ行くと「早起きの鳥は(餌となる)虫を捕まえる」という表現になり、直接的ではないが熾烈な食料争い、ひいては弱肉強食の精神が根付いているのではないかと思わされる。食うか食われるかの世界だ。「ほんのちょっぴり得した」ことで喜んでいられるだけ幸せなのかもしれない。

(2003.11.21)
by bhaus | 2004-07-08 22:49 | [独白]
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